Mさんの投稿『ACOA利他カフェに参加して』

Mさんの投稿『ACOA利他カフェに参加して』

Mさんの投稿『ACOA利他カフェに参加して』

キンキンに冷えたグラスに注がれた黄金色の液体がテーブルに並ぶ。

「それじゃあ、今日はお疲れさま!かんぱーい!」うづめさんの音頭で始まる飲み会。

満面の笑みで美味しそうにビールを飲み干す面々。

ここは、月一で開催されるACOA利他カフェの二次会。

お酒の問題を抱える家庭で育った私達が、仲間とともにお酒と向き合い、安心してお酒を楽しむ場。


なぜビールを飲むのか。

日頃、考えることもないテーマを、今、私は毎月参加するイベントで、考えています。


ただただ、美味しい。

のど越しがたまらない。

いい気分になれる。

夏はやっぱり生だ。


ビールが大好きな私ですが、以前は良くない飲み方をしていました。お酒にまつわる失敗は数え切れません。飲み過ぎて米原(終点駅)で一泊したり、家の鍵が開けられず、車で寝たり、酔っぱらった時にした話を忘れて、家族と喧嘩になったり。まあ、こんなのは可愛いもので、若い時には友達に迷惑をかけることも多々ありました。


人生に生きづらさを自覚するようになったのは20代に入ってから。今の自分なら分かりますが、当時の自分は、どうしようもない孤独感や、虚しさが、機能不全を抱える家庭で育った子供の特性であることなどはつゆしらず、時には辛さのはけ口をお酒に求めていました。酔っぱらう家族を身近に見ていたので、ああはなりたくはない、という思いがあるのに、同じような飲み方をしてしまう。そして、そんな自分を嫌悪する。虚しくなって、生きづらくなる。そんなループが続いていました。


30代半ばに結婚して、家族には迷惑をかけられない、二度と酔いつぶれる飲み方はしないと心に誓ったのですが、年に1回ぐらいのペースで飲み過ぎることがありました。家族に「二度としないでね」と言われるのにやらかしてしまう。今日もセーブするぞ、と心に決めて飲み始めたのに、4、5杯を過ぎた頃にはそんな決意もどこへやらのていたらく。


どうして、いつまでも同じ失敗をしてしまうのだろう。後悔とも反省ともつかない私の嘆きは、堂々巡りで、このまま年齢を重ねて行くことに不安を抱えていた頃、出会った映画、
それが、「カノン」でした。


2018年の2月、立命館大学茨木キャンパスの教室で上映された家族の物語は、私が知っている「アルコール依存症」のイメージと大きく異なるものでした。そして、アルコール依存症当事者の家族の苦しみ。憎しみと罪悪感。嫌悪と愛情。善悪の二元論で語ることのできない、人間の弱さの物語。そして家族の絆の強さの物語。


自分の生きづらさが、映画に登場する3人の姉妹と共通するものがあると感じた私は、うづめさんが今年から始めた、ACOA(アルコールの問題を抱える家庭で育った子供)利他カフェに、毎月参加させてもらっています。


この会では、毎回、最初に立命館の先生、みつさん(依存症研究が専門の臨床心理士)にアルコール依存症チェックリストを採点してもらうことから始まります。自分の依存度を定期観測するわけですね。


「先週、飲み過ぎたから、点数が上がったよ」、
「半年セーブしたから、順調に点数が下がってきたなあ」。


返されたリストの点数を見て、自己分析する面々の和気あいあいな会話。その中に居る時、依存症予防という、重くなってもおかしくないテーマを、前向きに楽しむものにしているこの会の不思議さを感じます。


チェックリストの次は、自助会。お酒にまつわる自分の話をする、誰かの話を聞く。話すことで、自分の中にある記憶と感情に向き合い、聞くことで、たくさんの気づきを得る。聞いてくれる仲間の存在が「孤独」を溶かしてくれているのか、心が軽くなってきているのを実感しています。


そして、利他カフェの後は二次会という名の飲み会。お酒にまつわる話は、辛いものも多いので、その後にお酒を飲むというと、傍から見れば変に見えるかもしれません。でも、これが、すこぶる楽しいのですね。依存症に問題意識を持つ、仲間と一緒に飲むお酒は 「ちゃんと適度に飲んで、楽しむぞ」、という共通認識があって、とても心地良く、安心して飲めるのです。私にとって、今では月一の楽しみとなっています。


映画を観て、ACOA利他カフェに参加して気づいたことがあります。


かつての自分の飲酒習慣は、依存症になるリスクが高かったこと。

孤独感などの生きづらさの感情は、依存症リスクを高めること。

仲間と飲むお酒は、無理なく適度に飲めること。

仲間と一緒に依存症の問題を考え、ともに飲むことが、自分の生きづらさからの回復を支えていること。

夏の暑い日、仕事帰りに、キンキンに冷えた生ビールを飲める私はとても、幸せ者だということ。


アルコール依存症になる前に、映画「カノン」やACOA利他カフェと出会えたことで、お酒を楽しむ人生をこれからも歩める私は幸運だったと思います。今、依存症になるリスクを抱えている誰かがいたら、是非、この映画を観てほしい、そんな思いで、今年も上映会準備のお手伝いをさせてもらっています。適度に飲めば、こんなに美味しいものは無い。特に仲間と飲むお酒は格別。そして、夏の生ビールは最高!


どうか、たくさんの人に、映画「カノン」が届きますように。

いつか、すべての「ビール好き」が、一生、夏に「生」を楽しめる世界が訪れますように


M(利他カノン2019スタッフ ACOA利他カフェ参加者 )

  
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